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保育士と保育の質に関する研究会

NECQA(保育士と保育の質に関する研究会)は、保育施設で働く保育者の「業務満足度」と保護者の「保育施設への満足度」の関係性に着目し、それらの相互的な関係性のあり方を明確にすることを目的とした研究会です。

課題背景

2015年の「子ども子育て新制度」への移行、2018年の保育指針、幼稚園教育要領等トリプル改訂の実施、2019年の幼児教育の無償化など、この数年間の保育を取り巻く社会環境は大きく変化をしています。また同時に待機児童と保育士不足、保育者の処遇改善や働き方改革など、制度面だけでなく実際に保育を行う保育者もふくめた保育全体で取り組むべき問題が顕著化しています。
そのような中で保育のあり方自体が検討され、特に最も根本的な「保育の質」についての議論が大きくなっています。保育の営みの根底は「子どもの最善の利益の担保」と言えますが、その前提条件として近年様々な要因が指摘されています。保育者の働き方や労働条件、保育室の物的環境や職員間の人間関係、保育制度などです。
これら様々な観点から、これからの時代の「保育の質」についての検討やその要因を明らかにし、そのことによりより良い保育の実践と保育全体の質の向上を目指していく取り組みが、社会全体から求められてます。

目指していること

本研究を通じて保育者と保護者の保育の取り組みに対する意識を明らかにし、最終的にそれらより「保育の質の向上」に資するものとします。そのために保育者、保護者両者の保育に対する「満足度」についての調査を行います。
従業員満足と、顧客満足の関係についての研究は、米国を中心に活発に行われています。例えば、ゼロックスなどを対象とした調査では、従業員満足度が1%増加すると、顧客満足度が0.22%増加すると言われています。保育所でも、保護者アンケートを取り、保育のサービス改善に、各保育所は努めていますが、保育士満足と、保護者満足が相関しているという明確なデータは見られません。
保育所に関わる全ての人々の満足度を構築する要因を明らかにして、その満足度の向上が具体的にどのように保育等に影響を与えているのかを明らかにします。そのことにより現代社会の保育と子育てをとりまく環境の向上を目指します。

研究の目的

本研究では保育施設で働く保育者の業務の満足度と保護者の保育施設への満足度の関係性に着目をして、それらの相互的な関係性のあり方を明確にすることを目的とします。その関係性がどのような要因により規定され、また影響を受けているのかを様々な調査より明らかにし、両者の関係が保育の質にどのように資するかを検討します。

実施計画

全国保育施設の大規模アンケート調査(保育者1万人・保護者1万人)

保育施設へ依頼を行い、アンケート調査実施。インターネット、紙媒体等活用。
インターネット調査会社等 活用を行う。全国規模調査を予定。

保育者アンケート調査項目

  • 保育業務と働き方
  • 業務環境あり方
  • 施設長マネジメント
  • 業務満足度
  • プロフィール

保護者アンケート調査項目

  • 保育サービスについて
  • 保育者に対する意見
  • 施設長マネジメント
  • 保育満足度
  • プロフィール

ヒアリング調査

保育者・保護者へインタヴュー、グループフォーカスインタヴュー調査 全国で数回実施予定。
アンケート調査の補完的役割。質的調査として具体的、実践的調査を行う。プロフェッショナルインタヴュー実施。保育関係者・自治体・研究者へヒアリング調査

全国保育施設の大規模アンケート調査(保育者1万人・保護者1万人)

2021年

4月 アンケート作成
7月 プレ調査実施
7月 アンケート実施整備
10月 本調査実施

2022年

1月 調査報告書作成
3月 インタビュー調査実施
6月 調査報告会
7月 論文等作成投稿

本研究、大阪教育大学研究倫理審を行う予定。なおアンケートやデータ管理に関して、研究会責任 下適切に対応する。

調査機関:株式会社ネオマーケティング

「人と企業の架け橋となる「価値のある情報サービス」を提供し、人々の生活向上と社会発展に貢献する」という企業理念をもとに、幅広い業種業界、大学・研究機関の皆様と、年間2500本を超える定量・定性調査を実施している調査会社です。

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研究員の想い

社会の変化を受けて保育も大きく変化を遂げています。
保育は子どもの育ちを確かなものとし、
そのことにより人とこの社会を作り上げる営みです。
保育の健全な営みなしにして、豊かな社会と未来などあり得ません。
そのより良い保育のあり方を目指し作られたのが本研究会です。
本研究会は特に「保育の質」のあり方に強い関心を持ち調査・研究を行っていきます。
その中において現在は「保育者の保育に関する満足度と保護者の保育への満足度の関係性」についての調査・研究を進めています。
これらの取り組みや結果が、これからの未来に向けた保育に何かしらの示唆を示し保育全体の質の向上につながることを目指しております。

大阪教育大学 健康安全教育系教育学部 教員養成課程 家政教育部門 教授
大阪教育大学附属 天王寺小学校 校長

小﨑 恭弘

1997年武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科修了。
2009年関西学院大学大学院人間福祉研究科後期博士課程満期退学。
1991年西宮市市役所初の男性保母として採用・市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。
専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」三人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験を持ちに「父親の育児支援」研究を始める。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。
NPOファザーリングジャパン顧問。兵庫県、大阪府、京都府等で各種委員を務める。「育児父さんの成長日誌」朝日新聞社。「ワークライフバランス入門」ミネルバァ書房。「パパぢから検定」小学館。「パパルール」合同出版等、多数。

研究員紹介

東京大学 大学院 教育学研究科 准教授

野澤 祥子

2013年、東京大学 大学院 教育学研究科博士課程 修了。博士(教育学、東京大学)。
東京家政学院大学 准教授を経て2016年より現職。
内閣府「子ども・子育て会議」委員。
厚生労働省「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」委員。
専攻は発達心理学・保育学。発達保育実践政策学センターで乳幼児の発達、保育の実践と政策に関わる研究を行っている。
男女2人の子育て中。
『親子関係の生涯発達心理学』(分担執筆)風間書房、『乳幼児の発達と保育:食べる・眠る・遊ぶ・繋がる』(分担執筆)朝倉書店、『園づくりのことば:保育をつなぐミドルリーダーの秘訣』(分担執筆)丸善出版などを執筆。

大阪総合保育大学 教授

瀧川 光治

1995年 大阪教育大学 大学院 教育学研究科(修士課程)修了。
2006年 聖和大学 大学院 博士後期課程満期 修了。博士(教育学)
聖和大学 大学院助手、樟蔭東女子短期大学、関西国際大学を経て、2014年4月より現職。
専門は「保育内容・方法学」。とくに近年は「人材育成のための園内研修のあり方」に関心があるが、長年「子どもの気づきや好奇心・探究心を育む保育」「ごっこ遊びの保育方法・保育環境」「保幼小の連携カリキュラム」などを研究している。
尼崎市、伊丹市、西脇市などで各種委員を務める。
『手がるに園内研修メイキング』わかば社、『10の姿プラス5・実践解説書』ひかりのくに、『保育者論』中央法規等を執筆。

四天王寺大学 教育学部 准教授

田辺 昌吾

2005年 大阪教育大学 大学院 教育学研究科 修了
2008年 大阪市立大学 大学院 生活科学研究科 後期博士課程 単位取得後退学
西日本短期大学を経て現職。
専門は「幼児教育学」「家族関係学」。
羽曳野市子ども・子育て会議(こども夢プラン推進委員会)副委員長を務める。三人の男の子の子育て真っ最中。
「家族・働き方・社会を変える父親への子育て支援」(共編著)ミネルヴァ書房、「子ども家庭福祉論」(共著)晃洋書房、「家庭支援論」(共著)光生館などを執筆。

東京大学 大学院 情報学環 特任助教

城戸 楓

大阪府立大学 人間社会学研究科 博士後期課程 卒業(人間科学博士)。
大阪教育大学 教員養成開発連携センターにて2014年から2019年までIRの調査を行い、現職では東京大学において教育工学分野において人材育成や防災関連の教育システムや尺度の開発を行う。その他、企業やNPO法人における商材開発や活動の効果検証、ビッグデータのリサーチや解析などの受託研究なども。
専門は認知科学、知覚と意識、機械学習、データサイエンス、など。

BABYJOB株式会社 代表取締役
大阪総合保育大学 大学院博士課程 児童保育研究科 児童保育専攻

上野 公嗣

1978年生まれ、武庫川女子大学 臨床教育学研究科 卒業、保育士。
ユニ・チャーム株式会社に10年勤め、多くの活躍するママと仕事をする事をきっかけに、
「私たちは、ママの笑顔をつくる環境を提供し続けます。」という理念で起業。
2013年 大阪市で定員5名の家庭的保育から始まり、
地域型保育事業を中心に全国で約50園を運営。
2015年 保育士と保育所を支援するBABYJOB事業開始。
2019年「すべてのママが子どもと手を繋いで登降園できるようにする。」を理念に、手ぶら登園サービスを開始する。
現在、大阪総合保育大学 大学院 児童保育研究科 児童保育専攻 在学中。

大阪総合保育大学 乳児保育学科 講師

阿川 勇太

2019年 大阪府立大学 大学院 看護学研究科 家族支援看護学領域 家族看護学分野 修了
小児科看護師、行政保健師を経験し、保育園保健師として子どもの発達支援・保護者支援・地域支援に従事。保育運営企業の産業保健師と保育部長の兼務を経て現職。
専門は「家族看護学」「公衆衛生看護学」「子育て支援」「子どもの発達支援」である。
主に家族形成期における家族支援に関する研究を行っている。
NPO法人ファザーリング・ジャパン関西 理事。
著書「保健師パパが教えるパパと子どものあそび-0~2歳児版-」

兵庫教育大学 大学院 連合学校教育学研究科 教科教育実践学専攻
生活・健康系教育連合講座(博士課程)

小崎 遼介

大阪成蹊大学 教育学部 教育学科 卒業
大阪教育大学 大学院 教育学研究科 養護教育専攻 修了(教育学修士)
兵庫教育大学 大学院 連合学校教育学研究科 教科教育実践学専攻 生活・健康系教育連合講座(岡山大学所属)在学中
大阪ハイテクノロジー専門学校 非常勤講師・神戸常盤大学 非常勤講師
保育士資格・幼稚園教諭専修免許・小学校教諭専修免許を取得。
子どもの健康・運動能力、安全・防災に関する研究に取り組んでいる。
その他、NPO法人神戸ライフセービングクラブに所属し、水辺の事故防止のためプールの監視や、海水浴場の安全管理活動に取り組んでいる。

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